日本の原風景と彫金

彫金とは何か。

日本では、彫金は古くは古墳時代からの歴史がある。

平安時代には様々な仏具がつくられ、江戸時代には刀の鍔など引き継がれ、
またたばこ入れ、キセルの装飾などにも多くみられる。

共通して言えることは、古墳時代の昔から、「道具」と「芸術」の間にあり、
美術的な意味でも大変美しい作品が作られ続けて来たことだ。

彫金は技術であり、芸術であり、またそのどちらでもないと言える。

使うものであり、またそうでないものでもあるこの技術は、
現代日本においては特異なモノであり、
大変貴重な『芸術』になりつつある。

古くから、この彫金と言う技術を用い、日本人は日本の四季を連綿と表現し続けて来た。

時代は変わっても、四季がなくならないのと同じように、
彫金という芸術は時代によって形を変えながら洗練され、受け継がれて来ている。

ひとつの金属と向き合いながら、ひとつひとつ手で作り上げられていく彫金は、
現代日本ではもはや芸術としてしか生きられないのかもしれない。

しかし、今だからこそ、世界に二つとないその一点こそに
日本の美しさを感じ、愛でる喜びを得られるのではないだろうか。

桜の季節になると日本中が少し浮き足立ったり、
落ちた楓を踏みながら歩いたり、
また初雪に空を見上げるように、
私たちは季節とともに生きている。

その季節の一瞬一瞬を、思い出とともに愛せますように。

河合隆男の世界を、どうぞお楽しみください。